始まりの夜

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今日も同じである。   学校でも本を読んで過ごし、一直線に家へ帰る。   家でも、本を読む。   他にすることと言えば、ご飯を食べ、宿題をし、風呂に入って寝る。   それだけである。   「誰か来ないかなぁ」   今日も同じ言葉を呟いた。   誰にも届くはずのない言葉を。   しかし、今日の呟きは届いていたのだろうか。   窓の外を、二つの影が横切った。   窓に駆け寄り、カーテンを一気に引く。   バンッと、窓を全開に開ける。   すると、暗がりの中、前方に浮遊する二つの影が視認できた。   影は一度留まり、揃って向きを変えてやって来た。   ゆっくりと、徐々に、確実に、こちらに向かって。
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