始まりの夜

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その子は、慌ても驚きもせずに、二つの影を注視している。   影が窓際へと来たとき、やっと姿を見てとることができた。   一つは、白い翼を生やした者。   もう一つは、黒い翼を生やした者。   色と言い、雰囲気と言い、二人はまるで対照的である。   「君かい?毎晩、僕を呼んでいたのは」   白い翼の者が問う。   「お前か?毎晩、うるさく俺を呼んでいたのは」   黒い翼の者が問う。   「呼んで、いた……?」   その子は、理解できずに繰り返す。   「そうだよ。ずっとずっと、聞こえてた。誰か、誰かって。すごく寂しそうな声が」   「俺にも聞こえていた。ずっと聞いていると、耳障りになってきた」   「「だから、こうしてやって来た」」   二人の声が重なる。   それは、とても綺麗な響きを生み出していた。
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