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「夜、だけ?」
期待外れであったのか、少し落ち込んだようだ。
「そう。夜だけなんだ。けど、忘れないで」
常に保つ笑顔と共に天使が、その真っ白でいて大きな翼と、暖かな腕でその子を包み込む。
「僕たちは、いつも君を見てるから」
包み込まれた子は、心地よさそうに瞼を閉じる。
それを見て、悪魔の口元がわずかにゆるんだ。
悪魔が始めて笑ったのである。
「そろそろ時間だ」
悪魔が天使に声をかけた。
「そうだね……今日は、おしまい。また明日ね」
天使がやんわりと体を離す。
その子は名残惜しいのか、天使に手を伸ばした。
天使は手を制し、その子の頭をふわりと撫でる。
「また明日」
そして、もう一度言う。
悪魔が窓から出たのに続き、天使も窓から出て行く。
二人は振り返ることなく、夜闇の中へ羽ばたいて行った。
それを、その子は見えなくなるまで見送っていた。
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