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鬱蒼と生い茂る森の奥深くに分け入り、手頃な木を探す。
一本だけ、白っぽい枝振りのいい木があった。
これがいい。
そこにロープをかけ、地面に座るとしばらくそれを眺めながらウィスキーをラッパ飲みした。
あぁ、これが私の墓標になるんだなぁ…。
過去の思い出が、酔った頭の中でぐるぐると駆け巡っている。
蘇るのは子供の頃の輝きに満ちていた瑞々しい日々ばかり。
それから先の、窮屈で醜悪で、欲望に塗れた大人社会の事は少しも思い出さなかった。
いや、思い出さないようにしていた。
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