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三月。
この日がとうとうやってきた。
三年間、最早腐れ縁と言っても過言でない奴から、クラスは一緒になった事がない癖に、委員会などで仲のよい奴。
そんな奴らとの別れの日。
俗に言う、『卒業式』という奴だ。
と言ってもこの学校の場合、一貫校であるからにして、あまり関係のない『祝事』という感じでしかない。
だがしかし、そんな学校に通いつつも、涙を流さずにはいられない生徒が一人いた。
それが俺である。
転勤族。まさしく俺ん家。
父親の仕事上、仕方がないのは分かっている。中学校のうちに転勤しなかったのは奇跡といえよう。
澄んだ空気、仲のよい友達。
ねがわくば、このまま皆と同じ学校で生活したかった。
東京への転勤。
悲しいが、全ては現実で、変えようのない未来だった。
「よう、信二。どうした?浮かない顔しちゃってさ」
後ろから抱きついてくる、クラスメイトの橋場(はしば)。
その後ろからニヤニヤと笑いながら鑑賞している飛田(とびた)。
二人はいわゆる『悪友』と呼ばれるやつで、二年になれば過激なボイコットまでした。
他校の窓ガラスは割るし、校長室のドアを破壊した事もある。確か、校長室のドアはまだ直ってないはずだ。
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