ボトル

5/6
前へ
/18ページ
次へ
 ずっと一緒にいた彼女は、僕より先に大人になった。慰めあうことはなくなって、いつからか二人の悩みは分かれていった。僕らの闇は異なった。  二人は、一人と独りになった。  独りになった僕は孤独を知った。彼女がいたから独りじゃなかったのに、彼女はいない。  今、僕は独り。  彼女は先へいってしまった。僕を置いて、いってしまった。  ずっと一緒にいることは無理だと、そんなのずっと昔に気付いていて、ずっと気付いてないふりしてた。そうやって、ずっと一緒にいれるって信じたかった。  彼女は前だけを向いて僕に笑いかける。その度僕は切なくなる。  彼女は僕の手の届かないとこから、こっちへおいでと手を伸ばす。  あの頃の君はそんな風に前を見ることはしなかった。大人になること拒んでたのに。  変わってしまった。  僕だけが過去に捕われてる。もう二度と戻ってこないのに、未だに前を見ようとはしない追憶者。過去の囚われ人。  過去のまま彼女を待つ心が、大人になること拒否してる。独りでいること望んでる。  望んだはずなのに、孤独は僕を傷つける。二人を知っている心に、独りは寂しすぎるから。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加