紙ヒコーキ

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 一度辺りを見渡して、どっちへ飛ばそうか決めた。太陽の方角。遠くまで飛んで行きますように。  いつもは見れない俯瞰風景。大きくて広い、それでいてとても小さな街。いつかは俺もここを出ていく。  誰が拾うかなんてわからない。誰も拾わないかもしれない。どこまで飛んでいくかもわからない。すぐに落ちてしまうかもしれない。  俺の想い。  ちっぽけで、誰もわからない俺の不安。誰も理解できないから、誰にも知ってほしくない。でも、誰かにわかってほしい。矛盾した想い。  拾った誰かが、俺みたいな想い抱えてなければいい。  手にした誰かが、俺と同じこと考えてればいい。  飛ばす。太陽の方へ。  矛盾したメッセージ。白い紙ヒコーキ。陳腐な言葉。  誰かが拾ってくれるといい。  風に乗って飛んでゆく。遠く、遠く。  遥か彼方、まだ見ぬ人のもとへ。 広い青い空に、弱々しい紙ヒコーキ飛んでいく。白い軌跡残しながら。 その様子は、なんだかとても切なく見えた。
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