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「はい。終わりましたよ。それじゃあね」
いつもと同じように看護師が点滴を変え終えた。
そして愛想笑いを浮かべてさっていく。
「ハァー」と一息ためいきをつく。
ふと窓の外を見上げると空を自由に舞う鳥を見つけた。
こんなさびれた町にも動物が生きてるんだな。
この町は機械と排気にまみれていた。
人々の心もすっかり汚れきっていた。
機械に頼りきり、自我をみな見失っている。
自分もその1人に過ぎないのだが。
僕は生まれてこのかた外界を知らずに生きてきた。
外に出ようとは思わないが。
窓から残酷な世界をただみさげていた。
家には僕に必要な医療器具が全て揃っていて、緊急用にとオペ室も用意してあった。
看護師も医師もみんな家を歩き回っている。1日の内容はいつも決められていた。
朝起きると点滴を変えその後にまずい朝食をとり、しばらくすると家庭教師が来て僕の頭に全ての教科を叩きこんでいく。
そして、しばらく休息をとると昼食。これまたまずい。
次に調子が良ければ散歩か武術。悪ければ、ただ読書をするか眠るか。
そんな決まりきった毎日にうんざりしていた。
どこか違う世界にいきたかった。
僕が好きな「アリス-変奏曲第1番-」のような
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