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「情けない。この程度かクソ坊主」
剣一はフッと顔を上げた。そこには厳しい顔をした父、剣龍の姿があった。
しかも偶然かもしれないけど、棺桶ではない幽霊の剣一の瞳を覗きこんでいる。
「お、親父? まさかオレが見えてるのか!? なあ親父!」
しかし剣龍はなにも言わない。そして次は隣にいるアクアに鋭い目を向けた。
「ひぃ!? こ、恐い……」
アクアはそうつぶやきながらも首を横にブンブン振った。
自分が見えることはありえないのだ。幽霊が見える人間はこの世にたくさんいる。しかし、死神である自分は死んだ者にしか見えない。下級でも一応『神』なのだ。幽霊ではない。
そんな自分が見えるということは、死んでいるか、この世には存在しない別のなにかになる。
後者は百パーセントありえないし、前者だって相手から生気が感じられるから絶対に違う。
たまに偶然参列者と目が合うが、今までは完全に偶然だと確信できた。
しかし今回の目の動きは明らかにそこにいるとわかっているような動きだった気がする。
アクアがそんなことを考えている間に剣龍は視線を外し、棺桶の前に移動した。
「うん? 思い過ごし……ですよね?」
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