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そんなアクアの言葉を聞いたのか剣一の死に顔を見たのかわからないが、剣龍はフッと笑った。
「可愛い女の子を泣かすとは罪なやつだなおまえは。しかも死因が謎とはな。まあとにかくこっちはオレに任せろ。佐織はオレが守るし、藍ちゃんもなんとかしてやる」
「親父……」
剣龍はそれだけ言って棺桶の剣一に背を向けた。
「行ってこい剣一! 地上に敵がいないなら上に行ってみろ! 片桐流の力をあの世で試してこい! ただ忘れるな。オレが教えた剣はおまえをただ強くするための物じゃない。誰かを守れ。いいな。それがオレから教えられる最後の剣の道だ」
剣龍はそれだけ吐き捨てて部屋を出ていった。
剣一はそんな最後まで越えることのできなかった大きな背中の方を向き、無い足だったが、なんとか正座して頭を下げた。
「今までご指導ありがとうございました! オレ行くよ! 親父に教えてもらった剣術をあの世で試してみる! 親父が上に来る前に片桐流を最強の剣術にしてやる!」
そう言うと、剣龍はピタリと立ち止まった。
「オレはあまりいい父親じゃなかったな。すまなかった剣一。おまえにはオレをも越える才能がある! あっちでも日々精進しろよ!」
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