第二章 魔界のプリンセス

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 現世とお別れした剣一は、不思議な空間に立っていた。  雲の上……なのだろうか?  辺り一面見たことのないふわふわとした黄色の綿菓子が無限に広がっている。  そしてその綿菓子の上にはたくさんの道があって、別れ道には看板が突き刺さっている場所もある。それに地上では見たことのない木なんかもたくさん植わっている。  剣一がまるで初めて都会にやって来た田舎者のように辺りをキョロキョロ見ているとアクアはニコッと微笑んだ。 「不思議でしょ? ここは霊雲道【れいうんどう】っていいます。ここは地獄とか天国とか色々な所に繋がってるんですよ」 「へぇ~。すごいな、これ」 「ええ、本当に幻想的ですよねぇ。この風景を偶然見た人間の皆さんは『桃源郷』【とうげんきょう】と呼んだみたいですよ」 「なるほど、桃源郷の由来はここだったんだな」  剣一は腕を組んでうんうんと首を縦に振った。  たしかにこんな幻想的な風景を見たら楽園だと思うのもわかる気がする。  常に吹いている風が心地良いし、さっきから甘くて柔らかい花の香りが鼻をくすぐって、なんだかとっても心が安らぐ。 「ここで昼寝したらきっといい夢が見れるな」
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