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「はい。仕事中なのにわたしもついうとうとして……」
そう言いかけてアクアは首をブンブン振って鎌を握り直した。
「ていうのは冗談ですよ! こんなこと言ったことがバレたら閻魔大王様に怒られてしまいます! ですからケンイチさん……」
捨てられた仔犬のように上目使いでうーっと見つめるアクアに剣一は不覚にも顔を朱に染めてしまった。
「い、言わないって!」
なんとかそれだけ吐き出して剣一はアクアから顔を反らした。
「ありがとうございますケンイチさん! では行きましょうか! 閻魔大王様が首を長~くしてお待ちですよ! ちゃんと迷子にならないようにしっかりついてきて下さいね!」
アクアは元気よくペコリと頭を下げて、雲の裂け目を進んでいった。
「おう。よろしく頼むぜ、死神さん」
剣一はそんなアクアの後を追うように後に続いた。
「や、やっと着きましたぁ……」
剣一とアクアは肩で息を切りながら朱色の神殿の前に立っていた。
あのあと元気よく出発した二人だったが、アクアが何度も何度も道を間違えたせいで、予定より五時間も遅れての到着となった。
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