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「そんなこと言われなくてもわかってる。足がガクガクするし、今すぐにでも逃げ出してぇよ」
「ならなんで! 早く逃げましょうよ!」
「うん。でもこうなったのはオレのせいだ。オレがこいつを足止めするから、アクアさんはできるだけ遠くへ」
「そんなっ! そんなのダメです! わたしの使命はあなたの魂を無事閻魔大王様のもとに届けることなんです! 足止めならわたしがなります!」
しかし剣一は退かない。震えていた足もいつの間にかもとに戻っていた。
「安心してよアクアさん。だいたいオレはまだ消えれねぇんだ! 片桐流の最強の誓いと、母さんを見つけ出すまでは! 行くぞ犬っころぉ! お?」
闘志を剥き出した剣一に対して、ケロベロスの全ての首は剣一を見つめたまま静止している。
不思議に思った剣一は真ん中の首の頭を撫でてみた。
「ケ、ケンイチさん!? なにしてるんですか! 手、食べられちゃいますよ!」
そう言われながらも剣一は撫で続けた。
するとケロベロスの首達は、剣一にすりよったり、ペロペロと顔をなめ始めた。
しばらく戯れたあと、ケロベロスはノソノソと門の横に移動して膝を折った。
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