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ケンイチと呼ばれた少年はさらに笑い声を張り上げ、お経を唱えるお坊さんのまぶしいハゲ山をツルツル撫でた。
「ぶははっ! ツルッツル! この人の頭ツルツルだよ、アクアさん! 過疎化? 今深刻な過疎問題を頭で再現しているのか、この坊さんは!」
「ひぃ、ち、違うと思いますよ。ていうか絶対違います! もうケンイチさん! いい加減にしないと怒りますよ!」
アクアが鎌をギュッと握り直したので剣一はピタッと動くのをやめた。
そして冷静になって棺桶の前に立った。
そこには死化粧を施された自分が横たわっていた。何回確認してもやっぱり実感が持てない。
「……オレは、死んだのか?」
取りあえず剣一は尋ねた。
数えきれないほど同じ質問を何度もしたが、アクアは嫌がることなく小さく頷いた。
「はい、残念ながら……ご愁傷様です」
「……そっか」
剣一は短くそう答えて、手で顔をおおった。
なんでこんなことになってしまったんだろう。心の中でつぶやいても答えは当然見つからない。
剣一はすっと目を瞑り、人間だった最後の一日を思い返した。
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