第一章 終わり

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 剣一の言葉を聞いた瞬間、父親の目つきが変わった。 「真剣勝負の中で真に使える技は真剣勝負の中でしか見い出せん! おまえはそうやって強くなったことを忘れたのか!」 「くっ、うっせえ! とにかくオレはもう辞める! 最後の一年ぐらい普通の高校生でいさせてくれよ!」  剣一はそれだけ吐き捨てて道場を後にした。 「朝から熱いね。はい、タオル」  そんな道場から出てきた剣一にスッとタオルを渡す一人の少女がいた。  剣一は彼女からタオルを受け取り、ポンっと頭に手を置いた。 「ありがと、佐織【さおり】。体大丈夫なのか?」 「うん! 今日は調子いいみたい。ケホッケホッ!」 「佐織!? ほら言わんこっちゃない! 早く部屋に戻るんだ!」 「はあい。じゃあお兄ちゃん、今日も学校がんばってね」  佐織と呼ばれた少女は寂しそうにそう言って階段をのぼっていった。  彼女は剣一の妹の片桐佐織。中学一年生で昔は元気な女の子だったのだが、数年前から原因不明の病にかかって今はその面影を失っている。  そんな変わり果てた妹の小さな背中を見て剣一はギュッと拳を作った。
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