第一章 終わり

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「佐織、おまえはオレがずっと守ってやる。だから早く元気になろうな」  剣一は階段の方に小さくつぶやいて家を出た。  人間最後の一日の天気は晴れだった。  地球温暖化のせいか、高まった夏の残暑が厳しかったが、まぶしい太陽がなぜか心地よかった。  きっと厳しい父親に初めて本格的に反抗した達成感からだと思うが、剣一は足取り軽く久しぶりに通う通学路を上機嫌で進んだ。  すると目の前になにやら人だかりができていた。しかもその大半が剣一と同じ制服をまとう高校生だったので、剣一も何事かと人だかりに加わった。 「な、なんだこれ……」  剣一は驚きと一緒に声をもらした。そこには見慣れない黒塗りの細身の刃物がざっくりと地面に突き刺さっていたのだ。  剣一は一瞬刀かと思ったが首を横に振った。あまりにも細すぎた。  そんな人だかりの中、剣一を見つけた一人の少女がニッと笑いながら声をかけてきた。 「おっす、剣一! あんたも気になったの?」  そう言ったのは女子剣道部キャプテンの綾瀬藍【あやせあい】だ。  中学からの付き合いで彼女の家も剣道道場を営んでいる。  藍は親が決めた剣一の婚約者で、彼女も今年見事に全国制覇を成しとげている。
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