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「なんか……来る!」
剣一は藍の盾になる形で彼女の前に出た。
そしてその瞬間、一瞬で視界が無くなった。
そう、剣一はこの瞬間死んだのだ。
「なんだったんだ、あれは……」
回想を終えた剣一はギリギリ残っていた膝を抱えた。
そんな剣一を見かねたアクアがポソリとつぶやく。
「ケンイチさんはなにかに襲われた……んですよね?」
「ああ、でも見えなかった。動体視力には自信があるんだけどね」
そう、剣一の動体視力視力は一言で言って、“異常だ”。
かの有名なイチローだって腰を抜かして驚くほど剣一の動体視力は高い。
そんな剣一が影も形も見えず、さらに音さえも聞こえなかったのだ。
「あれは……不可能だ」
剣一のつぶやきにアクアの体がピクッとはね上がった。それを剣一は見逃さなかった。
「やっぱりあんたなにか……」
「剣一ぃ!」
悲痛な叫び声に剣一の声が止まった。
声の主は藍だ。
「なんで、なんであんたが死ぬのよ!? ねえ! そんなのイヤァ!」
「藍……」
「あんたが死んじゃったら佐織ちゃんはどうすんのよ! 口癖のように絶対一生守り続けるんだって言ってたじゃないのよぉ!」
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