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ある日、久しぶりに聡史と裕太が家に遊びに来た。2人は同じ公立高校へ通っている。未希は2人を自分の部屋に案内した。未希は小学校4年生の頃から1人部屋をもっていた。その年、姉が中学の受験勉強を始めたからである。未希の部屋の様子はその当時からあまり変っておらず、小奇麗だが女の子にしてはシンプルで、ベットの中の少し大きめのヌイグルミだけが唯一女の子っぽい感じのものであった。
「それにしてもよ、聡史が演劇部に入ったんだぜ。びっくりだよな」
裕太が少し茶化したような口調で話題を出した。
「え、聡史くんお芝居できるの?」
未希はびっくりした表情で尋ねた。聡史は小学生の頃から割りとおとなしい方で、中学でもそれは変らなかった。未希もおとなしい方だが、少しだけ違うところは聡史はマイペース型であるということ。だから聡史が慌てた様子は今まであまり見たことがなかったし、演劇を始めるようなパワーがあるようにも思えなかった。
「やったことはないけど、なんだかできるような気がしたんだ。それにぼくもやっぱり何か自分のやりたいことを見つけたいって思ったしね」
聡史は自信満々に答えた。
「でもさ、よりによって演劇部だなんてさ!科学部とか美術部とか、そっちの方が向いてそうなのにな、聡史は」
裕太は相変わらず、聡史が演劇部に入ったことを面白がっていた。
「でもすごいじゃない。自分のやりたいことがちゃんと見つけられそうでいいわよね」
未希が羨ましそうに呟いた。するとすかさず裕太が口を開いた。
「未希だってピアノすごい上手じゃん。大体未希も未希の姉ちゃんも、ピアノは得意だしこんなすげえ進学校に行ってるし、本当にすごい姉妹だよ。それに姉ちゃんは美人だし」
裕太はちょっとだけ嬉しそうに、最後の一言を付け加えた。
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