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「そうか!おれ携帯持ってないからだ!」
突然裕太が大きな声を上げて立ち上がったので、聡史はびっくりした。
「だってよ、最近みんな携帯持ってるじゃん。中学の時からだって持っている奴いるぜ。だからだよ」
「でもさ、ぼくは携帯電話持っているよ」
聡史はそう言うと、立ち上がってズボンの後ろのポケットから携帯電話を取り出した。裕太はそれを見て溜息をついた。
「聡史のは決まった3件までしか電話かけられないやつだろ。それにメールも出来ないし」
「そっかぁ。みんなメールとかやってるもんね。写真とかも撮ったりできるし。でもさ、裕太はどうして携帯持ってないの?」
聡史は裕太に尋ねた。
「おれは…、明美が携帯嫌いって言ってたからだよ。だからおれも持ってないんだ」
裕太は少しだけ照れくさそうにそう言うと、聡史はおかしくてちょっとだけ笑った。
「そんなに笑うなよ。ちょっと恥ずかしいじゃないか」
「そうじゃないよ。じゃなくってさ、明美ちゃんがどうして携帯電話嫌いなのかってさ、裕太は知ってるの?」
「いや、知らない」
「だと思ったよ。ちゃんと聞いて考えなくっちゃね。自分の考えってのが大切なんじゃないのかなぁ」
聡史は得意の博士口調でそう言った。すると裕太も負けじと言い返した。
「じゃあ聡史はどうしてなのさ。何で普通の携帯持ってないんだよ」
聡史はぎくっとして裕太とは反対の方を向いた。
「それは…お母さんが…」
「そら見ろ!聡史だって自分の考えじゃないじゃないか」
裕太は鬼の首をひっ捕まえたように手を叩いて喜んだ。聡史が何か言い返そうと思ったその時、掃除時間の始まりのチャイムが鳴った。
「行こうか」
「うん、行こうか」
2人は教室の後ろの扉から出ると、それぞれの掃除場所へ分かれた。
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