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週が明けた月曜日の朝、学校へ向う聡史はいつもの駅で裕太を待っていた。すると、いつも通り裕太が走ってやってきた。
「おはよう、僕新しい携帯電話買ったんだよ!」
「おはよう、おれ新しい携帯買ったぜ!」
2人は同時にそう言うと、同時に携帯を見せ合っていた。
「なんだよ、聡史もか。それに同じ機種だよ」
「だってこれタダだったんだよ。携帯電話がタダってすごいよね」
それから2人は嬉しそうに新しい携帯電話の番号を教えあいながら、ホームへ向って行った。
「実はおれ、もうメル友いるんだぜ」
裕太が嬉しそうに聡史にそう言った。
「え、誰なの?」
「明美だよ」
明美は高校に入学してから、通うのが遠いという理由で携帯電話を持つようになっていたのである。
「うわ、ずるいなぁ。いつの間に」
「へへ。聞いたら明美、携帯持っているって言うからさ。だからおれも持つことにしたんだって。ついでにメールアドレス教えてもらったんだ」
そう言うと、裕太は嬉しそうに携帯電話のメールの履歴を見せてくれた。聡史はちょっとだけ裕太が羨ましかった。
『裕太はあれで結構社交的だもんな』
聡史はふっとそう思った。確かに裕太は、男子の友達はたくさんいるのである。
「ねえ裕太。やっぱり携帯電話じゃないような気がするんだ」
「何だよ、何の話?」
聡史の言葉に裕太が不思議そうな顔をした。
「ううん、なんでもないって」
聡史はそう言ってにっこり笑うと、携帯電話をポケットにしまい込んだ。いつも通りの朝、いつも通りの一日が始まろうとしている中、聡史はちょっとだけ新しい気持ちになれたような気がした。
~終わり~
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