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明美は走って玄関へ向かうと、そこには嬉しそうな顔をした裕太が立っていた。
「よお、久しぶり!」
裕太がにっこり笑って右手を上げた。
「あれ、未希と聡史は?」
明美は不服そうに尋ねた。
「オレだけじゃ不満かよ~」
裕太も不服そうに、でもにっこり笑って答えた。
ちょうど1年前の夏休み、中学1年になった裕太と未希と聡史がここに遊びに来てくれた。3人と明美は小学校の時からの親友で、特に未希とは仲がよかった。来年もまた来るって言って3人は帰って行ったのだが、今年の夏休みにやってきたのは見ての通り裕太1人だけだった。
「まあいいわ、上がって」
明美がそう言うと、裕太は履いている新品のスニーカーの紐を丁寧に解き始めた。
「あんた馬鹿ね。バス停から結構距離があるのに、新品の靴なんて履いてきちゃって」
明美は姉の様な口調でそう言った。1年前と比べると裕太の背は伸びているものの、どちらにしても彼の背は男子の標準と比べると低かった。加えて明美は中2の今現在ですでに160cmを超しており、どうしても裕太の方が幼く見えてしまうのである。
「へへ、せっかくいいやつを買ってもらったから見せたくってさ。でも失敗だったのは認めるよ」
裕太はそう言うと、痛そうに靴下の上から足をさすった。それから明美が裕太を奥の居間に案内した。
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