田舎暮らし

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 裕太が重たそうなバッグをドカッと置いて、テーブルの前にあぐらをかいて座った。明美も向かいに腰を下ろすと、同じくらいに母親が冷たいジュースを持ってきてくれた。裕太はきちんとお礼を言ってから、ストローでジュースを半分以上飲んだ。それから裕太は町のことを明美に話して聞かせた。その話の中には、未希と聡史が今年来られなくなった理由も入っていた。    裕太の話によると、未希は高校受験に備えて塾の夏期講習会に通わされたそうである。どうやら一流の高校を受験するらしく、夏期講習会に参加しなくてはならなくなったらしい。聡史は夏休みになってすぐに骨折したらしく、家で安静にしているとのことである。 「まあ、みんないつまでもずっと一緒ってわけじゃないしね」 裕太の話を最後まで聞いて明美がそう言った。   「明美は高校どうするんだ?」 裕太が尋ねた。 「行くわよ。あたし、美術ができる大学に進学したいんだ。でも田舎には高校ないからさ。きっと町で一人暮らしになるかもね」 明美がそう答えると、裕太は羨ましそうに言った。 「すげぇ。一人暮らしか。カッコイイじゃん!」 「そお?でもここはいいところよ。ゆっくり絵も描けるしね。やっと慣れてきたのにまた引越しするのもちょっとね」 そう言うと明美はちょっとだけため息をついた。   「おれも高校行くぜ。なんたって高校野球に出たいからな」 裕太は野球が好きで、小学生の頃は地域の少年野球に所属し、中学に入ってからも野球部に入部していた。明美が思っているよりは活躍しているらしく、裕太自身も野球には自信を持っていた。
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