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「ねえ、裕太」
出し抜けに明美が裕太の名前を呼んだ。
「なんだい?」
裕太はちょっと嬉しそうに返事をして、横を向いた。
「空、綺麗ね。あたしここに来るまでいっぱい空の絵描いたし、ここでもいっぱい描いたのよ」
「知ってるよ。明美は昔っからそうだったよな。未希とは仲良かったけど別につるんでいたわけじゃないしな。1人で絵描いているのもよく見かけたよ」
「そう。あたしも未希も、出会うまでは『独り』だったのよね。小学校5年生の時だったかな。おんなじクラスになってたまたま話したら妙に盛り上がったりしてね。お互いに性格全く違うし好きなことも違うけど、『2人』でもなんだか楽しいのよね」
そう言った明美の顔は、とても嬉しそうだった。
「空の絵、今描かないのか?」
今度は裕太が出し抜けに話題を変えた。
「バカね。スケッチブックもなんにも持ってきてないんだから、描けるわけないじゃない」
確かに明美の言うとおり、2人は何も持たずにやってきていた。
「ここの空は何度も描いたわよ。でも来るたんびに違う顔しているから、今だってスグにでも描きたいって感じかな。あんたといる時間がもったいないくらい」
明美はそう言ったあと、裕太がふくれっ面になったのを確認してから、プッと笑った。
「ちぇ」
裕太も苦笑いをした。
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