むかしの話

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祖父の家に泊まった時の話。 夜、トイレに起きた私は物音に気付いた。 カタ…コトン… カタ…コトン… テレビでみた機織りのような音が、物置から聞こえてくる。 懐中電灯を片手に、物置へ行ってみた。 音は止まない。 祖父は大店を商っていた。物置には色々な物が雑然と置かれている。 黒塗りの重箱が照らされる。 音は、どうやら箱の中から聞こえてくるようだ。 手を伸ばす。 「っ!!」 肩を掴まれた。 祖父だった。 「早く寝なさい」 いつも優しい祖父が怖い顔で叱った。 音は止んでいた。 箱は祖父と共に荼毘に付されたので中身が何だったのかはわからない。
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