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『……電車がまいります』
いつものようにいつものホームに電車がくる。
派手にデコレーションされたケータイを片手にあたしは大きなあくびをした。
『あ~ぁ、ほんと毎日毎日だるいなぁ。なんで高校なんて行っちゃったんだろ』
グチグチ言いながらも電車のドアが開いた瞬間すばやく窓際をキープした。
しばらくすると後ろの腰のあたりに違和感を感じた。
(まさか……痴漢?!)
行為はどんどんエスカレートしていく。
(やばいよ!だ、誰か…っ)
その時…
『おっさん、朝からキモイことしないでくんないかな』
半泣きで後ろを振り返ると、中学生ぐらいの男の子が痩せたサラリーマンの腕をつかんでいた。
サラリーマンは何も言わずに男の子の手を振り切ってドアが開いた途端逃げて行ってしまった。
『あの…ありがと』
意外な救世主にとりあえずお礼を言った。
『あ、ぢゃあ』
痴漢にあった恥ずかしさと、中学生に助けてもらった恥ずかしさでなんだか早くここから逃げ出したい気持ちになった。
次の駅に着いて、あたしはすぐさま電車からおりた。
『待って!』
おりるとすぐに後ろから腕を掴まれた。
みるとさっきの中学生だった。
『待ってよ。まだ話したいことあるのに』
『いやちょっと急いでるし!学校遅れるからっ』
『ここで降りないでしょ?』
『え?』
何を言ってるのかあたしにはわからなかった。
『いつもこの駅で降りないでしょ。俺、ずっと見てたから』
ただ黙って立ち尽くすことしかできなかった。
『だから…その…』
言いにくそうにそこまで言うと、今度はまっすぐあたしを見て言った。
『一目惚れってやつなんだけど!!』
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