68人が本棚に入れています
本棚に追加
本気
とんでもない①日だった。
あの後のことは思い出したくもない。
いきなり一目惚れだと言われ、周りの人たちにはひやかされ、焦ったあたしは男の子に背を向けて一目散に逃げた。
けれど男の子はあたしに叫び続けた。
『ちょっと待ってよ!本気なんだって!!ほんとに俺あんたのこと…っ』
(今どき一目惚れだなんて信じられるわけないっつーの!)
走って走って、なんとか逃げてきたのに学校に着くと遅刻した罰だと英語の課題が山積みになっていた。
『…お、終わった』
やっと課題をやり終えた時にはもぉ⑨時すぎていた。
『うそ!もぉ⑨時すぎてんの?!早く帰んないと』
あたしは急いで帰る用意をした。
夜道は何度経験しても慣れない。
暗くて、怖い。
(怖いよぉ~!早く帰りたい)
明かりのない暗い道を警戒しながら足早に急ぐ。
ふと耳を澄ますと、自分とは違う足音が聞こえてきた。
(え?何?まさか…ストーカー?!)
何度角を曲がっても、どんなに早足で歩いても足音はついてくる。
(痴漢の次はストーカー?!どぉしよう!どぉしよう!!)
今度はだんだん足音がはっきりしてきて、近づいてきているのがわかった。
(やだ!やだどぉしよう?!警察?!警察?!)
考えながらも走り続けていると、とうとう後ろから肩を掴まれた。
『きゃーっ!!』
『ちょっ、ちがっ!違うって!俺だよ俺!!』
後ろを見るとまたあの中学生の男の子。
『ちょっとあんた!こんなとこまでついてきたの?!もぉあたしにつきまとうのやめてくんないかな!』
『けど、危ないよ。こんな夜中に女の子が一人で帰るなんて』
『あんたのがよっぽど危ないよ!なんでついてくんの?!ストーカー?!』
大声で叫ぶと、いきなりすねたように頬をぷくっと膨らませた。
『だって…好きな人が襲われたりしたらイャでしょ?』
『好きな人』とゆう男の子の言葉に、なぜか胸が高鳴った。
『と、とにかく!もぉついてこないで!!わかった?ぢゃあね』
『イャだ!』
歩きだそうとしたらいきなり抱きしめられた。
というか、後ろから羽交い締めにされた。
『ちょ、離しなさいよ!!』
『イャだ!…ずっと好きだったんだ。ずっとあのホームで見てるだけだった。やっとこうなれた。お願いだから、俺のこと好きぢゃなくてもいぃから、拒まないでよ…』
そぉ言って半泣きになりながらあたしを痛いほど抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!