68人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから奴は毎朝いつものホームであたしを待っている。
『おはよー恭子』
教えたはずのないあたしの名前を呼ぶこの子はメイサ。
初めて会った時からやけに顔立ちがいぃと思ったけど、聞いてみると(と言うかメイサが勝手にしゃべっていたのを聞いた)ハーフらしい。
『あんたねぇ…毎日毎日あたしのこと待ち伏せすんのやめてよね!』
『俺もこの電車乗るんだからいぃでしょ?それにやっと恭子とこうなれたんだから』
『こうなったってどぉなったのよ!』
『そりゃあ、恭子と話せるようになって…こうして隣に並べるようになったことだよ』
少し照れたように下を向きながらポソッとつぶやいた。
なんだか可愛いと思ってしまうあたし。
『な、なにそれ!あたしはべつに話す気もないし隣に並ぶつもりなんかないんだからね!だいたい話すって言ってもあんたが勝手に一人でしゃべってるだけだし隣に並ぶって言ってもあんたが勝手に隣にきてるだけでしょ!!』
息継ぎをするのを忘れてしまうぐらい早口で言い切った。
苦しそうにゼェゼェ息をするあたしをメイサはきょとんとした顔でみた。
少ししてメイサはにっこり笑った。
『けど恭子、なんだかんだで相づち打ったり反応してくれるでしょ』
『それは…なんて言うか……』
『嬉しいんだ。恭子がそぉやって俺に応えてくれるの』
『あんたねぇ』
あたしはほぼ呆れた。
(なんなのこいつ…もぉ無視しよ)
『ねぇ恭子』
あたしは聞こえないフリをした。
『俺、本気だからね』
そんなことを言われて平然としていられる女がいるだろうか。
あたしはダメだダメだと思いながらもメイサのストレートな言葉にドキドキしていた。
最初のコメントを投稿しよう!