ヤキモチ

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ヤキモチ

メイサは可愛い。 ご主人様の後をちょこちょことついてくる子犬みたいだ。 メイサは優しい。 どんなにひどい言葉を浴びせてもいつもニコニコして寄ってくる。 メイサは良い子。 だけど、あたしの彼氏にはなれない。 なぜならあたしには今、気になっている人がいる。 それは… 『恭子!』 背の高い男が遠くからあたしを呼ぶ。 『あ、おはよー隆史!』 そう、この男こそあたしが今まさに気になっている張本人。 隆史はあたしの親友でもある。 背が高くて黒髪の短髪、毎日の野球部の練習で少し焼けた肌に真っ白な歯がよく目立っている。 『今日、練習ないんだ。久しぶりに帰りにどっか寄っていかないか?』 久しぶりの隆史の誘いにあたしは一瞬で舞い上がってしまった。 『うん!行く行く!…あ』 すぐに頷いたけれど、ふとメイサのことを思い出した。 (あいつ、最近毎日帰りもあの駅にいるよなぁ…今日も待ってんのかな……) 『なんかほかに用事あった?ならまた別の日に…』 『や、なんもないよ!大丈夫!行く!隆史とどっか行くの久しぶりだし』 『そっか、ぢゃあ行こうぜ』 (まぁいっか。別に約束してるわけぢゃないし) 学校が終わって、あたしと隆史はすぐに街へ出かけた。 買い物をしたりアイスを食べたり、あたしは隆史とこうして一緒にいられることが嬉しかった。 けれど幸せな時間はあっという間に過ぎていった。 『ぢゃあまた明日ね』 『おう!また明日なー』 あたしはさよならの後も隆史の後ろ姿をずっと見ていた。 (あぁ…親友から抜け出したいなぁ…なんてね。……帰ろ) ふぅっとため息をついて振り向くと、 『…恭子』 改札口にメイサがいた。 『あんた…もしかしてずっと待ってたの?!なんで?!』 いつもの時間から⑦時間も立っていた。 『恭子…今の奴』 メイサは抱えていた鞄をぎゅっと握り締めた。 『あ…今日はその、用事があって』 別にメイサにやましいことなどしていないけれど、なぜか動揺してしまった。 『………っ』 『あ!ちょっと!』 メイサは唇を噛み締めながらその場を走り去ってしまった。 メイサが走り去る時に泣いていたような気がして、あたしの心はズキズキと痛んだ。
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