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黒い煙があがり、断末魔が木霊する。…血の匂いが鼻をつつき、脳裏に浮かぶのは死の恐怖。
「ぎゃぁぁあぁあ…」
戦場の一角で悲鳴があがる。兵士の腹を鋭利な爪が貫いている。その爪の持ち主は人ではない異形な姿をしており、その瞳からは生気が感じられない。
「ば…化け物だ…撤退だ!!引けっ!」
隊長格らしき人物を筆頭に兵士たちが後に続く。背後からは隊員たちのものと思われる悲鳴が追ってくる。
ついにすぐ後ろから悲鳴が聞こえ振り返ると、既に爪を構え今にも殺そうとしている異形のものが視界に入った。
(ここまで…か…)
死を決意し、瞳を閉じる。だがいつまでたっても心臓が止まる気配はない。
恐る恐る重くなった瞼をあげると、そこには蒼い髪を靡かせながら佇む少年らしき背中があった。
「おい!何をしている!?速くにげ……!?」
次に視界に飛び込んで来たのは、先ほど自分を襲ってきたものの変わり果てた姿と…黒く蠢く異形のものの大群だった。
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