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俺は、バス停までの道を歩きながら、昨日の女性のことを考えた。
いまどき稀有とも言える親切な人、と言えばそれまでだが、親切心だけで若い女性が声をかけられるものだろうか。
ずぶ濡れになろうとしている見知らぬ男に。
きっと。
俺の背中が、哀れに見えたからに違いない。
昨夜の雨は身にしみた。
玲子が来ないことはわかっていたはずなのに、実際そうなってみるとショックを受けている自分がいた。
離婚したことを実感した瞬間だった。
冷たい雨が、うつろな自分の中にぼたぼたと貯まっていく感じがした。
その雨を遮ってくれたのが、彼女だった。
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