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振り向くと、ビニール傘を差した若い女性が立っていた。
その女性は、傘を俺の頭の上に傾けてこう言った。
「よかったらこれどうぞ」
「えっ」
女性は、戸惑っている俺を見て、はにかみながら首をすくめた。
「わたし、迎えに来てもらうので傘いらないんです。だから。。」
「いいの?でも。。」
「けっこう降ってますから。どうぞ」
「あ、ありがとう」
彼女は俺に傘を渡すと、くるりと背を向けて停車場のほうに歩き出した。
彼女は赤いコートを着て、首もとに黒いストールを巻いていた。
彼女の背中を見た時、はっとした。
この傘は、どうやって返せばいいんだ?
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