雨の日

7/7
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
遠くなってゆく彼女の背中を見て、追いかけようと足を踏み出した時、水たまりがバシャリと音を立てた。   足元が冷たい。   傘を差したまま、停車場へ急ぐ。   彼女は迎えの車に乗り込もうとしていたところだった。   「まって」   彼女は俺のほうに顔を向けた。   「この傘、どうやって返せば」   「古いものなので。返さなくていいですよ」 彼女は微笑みながらそう言うと、さらりと車に乗り込んだ。     俺は、なんだかもどかしくなった。 それが何なのかわからないまま、遠ざかってゆく車のテールランプを見送った。     雨の夜。   こんなふうに、俺とレイコは出会ったのだった。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!