海の上の邑(むら)。

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軒と暖簾を潜り抜けて店内に入れば、日焼けした恰幅良い店主が『僕』出迎えた。 小刀を買いに来たと伝えれば椅子を勧められる。遠慮せずに座った。 さて、商談の始まりだ。 なるべく安く手に入れば良いんだけど。 店主が奥に引っ込んで、お茶と品物を持って来た。頂きつつ商品を見ていたらあれこれ説明してくれる。 持って来たのは鬼神が作ったとか、巨大な蛸を一撃で鎮めたとか、尾ヒレどころか胸ビレまでつきそうな程の噂を持った銘刀達らしく、値段もかなりお高い。 土産品か・・・・。 そんな大それた物じゃ無くて良いんだと伝えて、日用刀を出して貰った。 出して貰った小刀はどれも普段使い用の割には質が良くて、しかもさっきの品より良心的値段だった。 気に入った拵えの刀を見つけたので、鞘から抜いてみる。 それは、青く透き通った刃を持つ不可思議で魅力的な小刀だった。 聞けばこの辺りの民が使う物で、海底から取れる鉱石を削った物らしい。 『僕』が吃驚していると、店主はそんな品珍しくもなんとも無いと笑った。
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