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新な環境
「ふぅ、やっと着いた」
長い間乗って来た電車を降りると、むわっと夏特有の蒸し暑い空気に包まれた
「あっぢぃ~」
季節はもう夏なのだと改めて思い知らされた
改札口を出る頃にはすでに額に汗が滲み出して居た
「ふぅ、とりあえず商店街か」
彼は、今年で十七歳になった相羽政司、この物語りの主人公
彼はこれからこの街で一人暮らしをする事になり、電車を乗り継ぎを重ね五時間掛けてこの街に来た
左手には海が見えた
電車がこの街に近ずいた時からはずっと見えていた海だ
その海から時折来る潮風のお陰で、幾分か暑さはマシだった
「……………あつぃ」
まぁマシなだけで、暑い事には違いないのだが
潮風に乗ってやってくる磯の香に、何度か海を振り返ってしまう
キラキラと輝いた砂浜には、海水浴に来ているのだろう人達がたくさん居た
皆それぞれ泳いだり、サーフィンをしたり、中にはスイカ割りまでしている人達もいた
それを見ているとまた幾らか暑さがマシになった気がする
新しく住む事になった家までは、この道の先にある商店街を越えた所にあるらしい
十五分程歩いて居ると、商店街が見て来た
商店街にも、海程では無いがたくさん人が居た
行き交う人は皆、大きな買い物袋もって歩いて居――
「はいっ、どうぞ!」
「うっ!あ、え?」
急に声をかけられて渡されたチラシを、つい反射的に取ってしまう
あまりに突然だったために思わず、差し出して来た人を凝視してしまった
驚いた事にチラシ配りをしていたのは、政司よりも頭一つ分ぐらい小さい女の子だった
「家の手伝いか?小さいのに大変だな」
俺のそんな視線に気が着いたのか、少女は俺に視線を合わせると、ニコッとかわいらしく笑ってから、軽く頭を下げた
吊られてこっちも会釈を返してしまうと、少女はすぐにチラシ配りを再開した
小さいのにしっかりした子だなと思いながら、渡されたチラシに目をやる
そこには[リトルスター]という雑貨屋のお買い得商品や、店の場所が書かれていた、手書きで
「なんで手書?!」
つい言葉に出してツッコんでしまったが、まぁこれから何かと物要りだし、今度利用させて貰う事にしよう
そんな事を考えながら商店街を歩き続けた
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