第一幕・始まりの音

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どの学園にも必ずと言っていいほど、マドンナが存在するだろう。 ここ榊学園も例外ではない。 マドンナといえば才色兼備だったり学園の人気者だったり、容姿が綺麗とか可愛いとか、一定の条件が揃った女の子が自然となるものだろう。 少なくとも俺はそう思ってた。 実際、俺の学園のマドンナも顔は綺麗だし勉強もできるし、生徒会長まで務めている。 かといって気取ってない。 生徒の人気も高ければ、教師の信頼も厚いのだ。 これだけの条件が揃っていれば異性にモテたり、彼氏がいると安易に想像がつくだろう。 だけど、噂では彼氏はいないらしい。 学園に入学して二年だが、マドンナに告白する男は口を揃えて言う。 「近づけない、告白できない」と―。 彼女のミステリアスな雰囲気と少し人間離れしたところ、何より顔を見ると途端に躊躇って告白ができなくなるらしい。 一部のファンではミステリアスな雰囲気がいいと評判だが。 今は学園のマドンナー天堂 紗雪(てんどう さゆき)が体育館のステージで生徒会の予算についての話をしているが、騒がしかった体育館も彼女がステージに立つと水を打ったように静かになる。 クラスは違うが、同じ二年生ぐらいしか知らない。
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