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何度もステージに立つ彼女を見てるけど、特別な興味も感情もなかった。
今だって早く終わらないかと思ってるほどだ。
「全…おい、全」
俺の後ろに立つ親友の横山 十和(よこやま とうわ)が声をひそめて呼んだ。
「何?」
俺は若干、顔を後ろに向ける。
「このまま抜け出さねぇ?これが終わったら授業もねぇし」
「賛成。抜け出すぞ」
俺と十和は目配せし、少し体を前のめりに傾けてそっと列から離れる。
「ちゃんと話を最後まで聞きなさい。堂島 全、横山 十和」
学園のマドンナは真っ直ぐ俺と十和を見ながら言った。
(なんで分かったんだ?)
周りから白い目で睨まれ、俺と十和はしぶしぶ列に戻る。
すごく居心地が悪い。
それにしても、ステージから俺の立っている位置までだいぶ距離があるのに、どうして俺と十和だと分かったんだろう?
いくら視力のいい俺でもステージに立つマドンナの顔は小さくて見えないのに…
しかも今まで同じクラスになったことがないから当然、面識もない。
マドンナが俺の名前を知ってるハズがないのだ。
俺がマドンナみたく有名なら話は別だが、残念なことに凡人である。
やはり彼女はどこか人間離れしている。
俺はそう結論づけ、ステージに立つマドンナを撫然と眺めた。
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