第一幕・始まりの音

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「ん…おい、全って!」 ハッと我に返る。 全然聞こえなかった。 「今日も行くだろ?卯月学園の合コン。名門の女子校だぜ」 彼女と別れてから放課後はいつも他校の女の子と合コンだ。 寂しい訳でもすぐに彼女を作ろうとも思ってない。 そこで好きな子に出会えればいいが、ほとんど暇つぶしで参加していた。 「そうだなぁ~、あ…」 俺は考えながら視線を逸らすと天堂 紗雪が花壇の縁に座って本を読んでいるのが見えた。 「全、お前何見てんの?」 十和が俺の視線を辿る。 「会長じゃん。いい女だよな。ああいう女を連れて歩いてみたいもんだよ」 「マドンナって、いつも一人でいるよな」 教師と話してるのを見たことがあるが、彼女が友達と一緒にいるのを見たことがなかった。 今だって遠巻きに彼女を見る生徒がいるのに、誰も近寄ろうとはしない。 「全、会長はやめとけ。確かに綺麗だけど、何を考えてるか分からないし」 「別に興味ねぇって」 強く否定して原付にキーを差し込む。
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