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「にしても小嶋の野郎~、もう六時じゃねぇか」
俺はぶつぶつ文句をたれながら廊下を歩いて下駄箱に向かう。
かなり時間をロスしてしまった。
十和をだいぶ待たせたし、先に合コンに行っただろうな。
そう思いながら職員室の帰り道、生徒会室の前を通りかかるとドアの隙間から白い光が漏れているのに気づいて足を止めた。
(こんな時間まで何してんだ?)
訝しく思いながらドアの隙間から中を覗く。
すると、床に膝をつき自分の体を抱きしめるように座りこむ生徒会長の姿があった。
(何だ、あれは)
マドンナの背中に半透明に透けた羽根のようなものがついていた。
人間には絶対にない。
日本昔話にある『鶴の恩返し』のように、見てはいけないものを見てしまった気分だ。
俺は更に凝視してドアを少し開ける。
すると、ギッ…とドアが軋んだ音をたててしまった。
(やべっ!)
慌ててドアから離れ、壁に張りつく。
「誰!誰なのっ?」
遅かった…
俺は腹をくくって生徒会室のドアを開けた。
もう一度目を凝らすと天堂の背中に羽根はなかった。
やはり見間違えただけか。
「二年A組の堂島 全…」
天堂は俺の登場に目を見開いて俺を見ていた。
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