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「なぜ、ここに来た?」
「たまたまだよ。通りかかっただけだ」
「…嘘をついてる様子はないな」
(何なんだよ、この女は)
ふと気がつけば天堂の顔を近くで見るのも、こうして話すのも初めてだった。
学園のマドンナと謳(うた)われるだけあって、綺麗な顔をしている。
いや、綺麗というより“奇麗”の方が合ってるかもしれない。
無表情だが日本人形のようで、不思議な魅力がある。
「見てしまったのだろう」
俺は天堂の言葉の意味を察した。
「背中に生えた羽根の事か?」
「やはり見られてしまったのなら、隠す必要もない。私は天使だ」
一瞬、笑った方がいいのか?と思った。
冗談にしてはもっとマシな冗談が言えないのかと。
でも俺がそうしなかったのは、天堂が真剣な顔をしていたからだ。
いや、無表情だから嘘をついてるか否か分からない。
だけど俺の考えはすぐに否定された。
天堂の背中には再び羽根が広がっていたからだ。
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