トキを超えて

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トキを超えても私達は結ばれなどしないんだ。 私の初めての同窓会は記念すべき二十歳の時だった。 皆少しずつ大人になり、中学だったあの頃の面影はうっすらしている。 誰もが懐しく思えるが、私は一人の男性の隣に腰を下ろした。 「去年は新人賞おめでとうございます」 私は驚いて振り向いた男性に会釈する 「びっくりさせんなよ、杉村」 「久しぶり」 彼は私が初めて愛した男性だった。初恋ではなく、初めて愛した人 「ごめんね、そんなつもりなかったんだけど」 名前は高森哲。今は幼い頃からの夢を叶え、プロ野球で活躍中。去年は新人賞を獲得した程の実力者だ 「もう俺になんて話かけてくれないかと思った…」 「裏切られ続けたからね…」 そう、彼にはいつも裏切られていた。私が一方的に信じていただけなのだが、彼はそれを知っていたのでやはり裏切られたのだ 「でも…ずっと信じてくれたな?」 「恋のチカラ、かな?」 「ごめん」 「いいよ。それより本当にプロになれたんだね」 「あぁ、なんとか」 「流石!」 私はわざとらしく拍手をする 「何がよ」 「…なんでそこで雰囲気沈めるのよ、このKYめ」 「えっ…ごめん」 「別に」 「なぁ、同窓会なのに飲まないのか?」 不意に哲が私の前に置かれたグラスを不思議そうに眺めながら呟いた 「飲みたいんだけどねぇ。これ見て」 私は左手を彼の前に突き出す 「…結婚したんだ?」 彼は私の薬指で光る指輪を哀しげに見つめる 「そう、新婚ホヤホヤよ」 「子供、か」 少し落ち込んだ声の彼に対し、私は追い討ちをかけるように間髪いれずに答える 「うん、丁度3ヵ月」 「もう杉村って呼べないな」 「そうね。今はもう西島亜基って名乗らなきゃ」 「なんか…不思議な気分だ」 「いつまでも貴方を追いかけてなんかないわよ?」 「そうだよな…」 「惜しい?」 「まさかっ…」 哲は思わず声を大にして否定する。私はそんな彼の心中を察し、その言葉を鵜呑みにする。 「そうよね」
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