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ラウラは暖かな部屋で毛糸を編んでいた。
外は闇に覆われていて、その中で雪がぼんやりと光を放ちながら舞い降りる。
暖炉には火が音をたて、静かな家の中を明るくしていた。
その火はチリエに似ていると、ラウラは思った。
もちろん、もっともっとあの花は赤いのだけれど、毒々しくなくて、むしろ暖かな感じがするのだ。
ラウラは、チリエの花が大好きだった。
もう、雪が降り始めて三ヶ月が経つ。
そろそろ、花が白くなる頃だ。
今年は雪も風も強くて、花を見に行かずにいた。
手を休め、ラウラは立ち上がる。
窓に近付けば、ほわりとガラスが優しく曇った。
寒さが伝わる。
独りで気楽に過ごしているラウラには、チリエを愛する余裕があった。
春の白い花、夏の青葉、秋の優しい茶色、冬の赤い花。
そして、この村に来てから知った不思議な言い伝え。
素朴で緩やかに時が流れるこの村に留まり続けることを決めたのも、チリエに惹かれてやまなかったから。
ほう、と再び窓を曇らせて息をつくと、不意に背にしている扉が叩かれる音がした。
こんな何もない日の夜に、誰かが訪れるなんて滅多にないこと。
ラウラは小さく首を傾げ、そっとドアを開けた。
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