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まず目についたのは、その髪であった。
美しい茶色の髪。
この村の者の銀髪ともラウラの黒髪とも違う、輝きを持った色。
男性だった。
痩せて見えるがしっかりした体で、女性にしては背の高いラウラの目線に肩がある。
彼女には見慣れない顔であった。
「……どうなさいました?」
「実は、この雪で足止めをくらってしまって。泊めていただけるところを探しているのです」
美しいテノールがつむいだ言葉の意味をラウラはすぐに理解した。
村には、宿なんてものはない。
そして田舎だからだろうか、決して悪い人たちではないのだが、外から来た者に警戒心を見せるのだ。
きっとこの前にも何件か回って断られ続けたのだろう。
「どうぞ、狭くて申し訳ありませんけれど」
「よろしいのですか?」
「ええ」
この村に来たばかりの時、同じように少し苦労したラウラには断る理由はなかった。
安心したように笑顔を見せた来客を、ラウラは火の側へと促した。
男性は、ソールと名乗った。
「どうして、お一人でこんなところに?」
「……会わなければならない人がいるのですが」
この雪で、見失ってしまいました。
そう続けて、ソールは目を伏せた。
「見失った?」
「ええ。ですが、チリエの木にたどり着ければ」
「え?」
ラウラが聞き返すと、ソールは微笑み、頷いた。
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