29人が本棚に入れています
本棚に追加
次の朝。俺はいつものように幼なじみメンと登校。教室に入って机に突っ伏して微睡んでいると、
「ねぇ、茄子くん。」
と横から声をかけられた。
振り向くとそこには色白で大人しそうな子がこちらを見ていた。
「あの…柳瀬さん。那須の発音間違ってません?」
背中まである長髪に目は黒目がちなこの小柄なお嬢さんの名前は柳瀬貴由。吹奏楽部所属らしい。大人しそうに見えて色々話しかけてくるどこかミステリアスなお方だ。
「そんなことはいいからさ。」
あぁ。否定されましたとさ。その程度ですよね。俺が茄子でもゴマでもキュウリでも。あ、でもキュウリは嫌だな。嫌いだし。キュウリに蜂蜜塗って食べるとメロンの味がする~。とか言ってる奴は本当に死ねばいいと思う。
「ちょっと茄子くん聞いてる?」
「あ、サーセン。」
「ところでさ。キュウリに蜂蜜塗って食べるとメロンの味がするよね。」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
何このタイムリーな質問。この人俺の心見抜いてるの?
「なに?なんか謝ることでもあるの?」「いや…独り言っす。」
「ふぅん。まぁ、からかうのはこれくらいにしておくよ。」
何その意味深発言。それじゃまるで本当に俺の心見抜いてるみたいじゃないか。
そんな柳瀬さんに震えながら萎縮している自分が情けなかった。こんな小柄な子なのに内に秘めたるこの力は一体なんなのだろう。
「はぁ…。もっと大きくなりたいなぁ…。」
この時口から俺の心臓が飛び出しそうになったことは言うまでないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!