第一幕

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頭が痛い。 後頭部を押さえるとこぶが出来ていた。 医者によると、僕の記憶が無いのは頭を打ったせいらしい。一時的なものだろうという。 僕はゆっくりと起き上がり、松葉杖をついて部屋から出た。 病室に居ても、どうせやる事も無いしリハビリも兼ねて歩く事にした。 長い病院の廊下を歩く。 松葉杖だとやはり歩きにくい。何度もこけそうになった。 売店に行く。別に買うものもないが、暇潰しに雑誌でも買っておこうと思った。 財布を取り出し、勘定していると急に背を叩かれた。 「憂滋、憂滋じゃん!なにやってんだ、んな格好して。」 驚きの声を上げる相手を見遣ると、大学の同級生だった。 「なにって…怪我したから、病院にいるんですけど…」 僕は素っ気なく返事を返した。別に仲がいい訳でも無い相手だったので、適当に返事を返し、勘定を済ました雑誌を脇に抱えた。 不思議そうな顔をしている同級生。 僕が怪我をしたのがそんなに不思議なのかと、訝しげな顔をしていると、同級生はにやりと笑い僕の肩に腕を回してきた。
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