第一幕

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僕が悠々と着替えているその横で、青年が黒いバックに僕の物を詰めている。 携帯、財布…封筒の様なもの。それを詰め終えると、僕の方にへと向き直り、松葉杖を突き出した。 「何やってるんすか!!ゆっくりしてる暇ないんすよ!!」 僕はその声に慌て、松葉杖を受け取ると走り始める青年の後ろをついてゆく。 「…あの…僕、怪我人なんですけど…」 「怪我悪化すんのと、警察に捕まるの、どっちがいいんすか!!」 僕は躓きそうになるのをこらえ、なんとか青年についてゆく。 病院の裏口だ。正面は駄目らしい。僕は青年に言われるがまま走る。 「け…警察って…?」 息を切らしながら僕が問い掛けると、青年は僅かに僕を振り返り 「…本当に覚えてないんすね…。憂滋さんの言った通りだ。こりゃぁいいっ」 青年は一人喜んでいる。僕は首を傾げ、後ろを走る。いつの間にかビルの裏にへと入りこんでいた。 奥に進み、人影が無くなった頃、漸くして青年は止まった。僕は肩で息をしている。
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