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僕が悠々と着替えているその横で、青年が黒いバックに僕の物を詰めている。
携帯、財布…封筒の様なもの。それを詰め終えると、僕の方にへと向き直り、松葉杖を突き出した。
「何やってるんすか!!ゆっくりしてる暇ないんすよ!!」
僕はその声に慌て、松葉杖を受け取ると走り始める青年の後ろをついてゆく。
「…あの…僕、怪我人なんですけど…」
「怪我悪化すんのと、警察に捕まるの、どっちがいいんすか!!」
僕は躓きそうになるのをこらえ、なんとか青年についてゆく。
病院の裏口だ。正面は駄目らしい。僕は青年に言われるがまま走る。
「け…警察って…?」
息を切らしながら僕が問い掛けると、青年は僅かに僕を振り返り
「…本当に覚えてないんすね…。憂滋さんの言った通りだ。こりゃぁいいっ」
青年は一人喜んでいる。僕は首を傾げ、後ろを走る。いつの間にかビルの裏にへと入りこんでいた。
奥に進み、人影が無くなった頃、漸くして青年は止まった。僕は肩で息をしている。
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