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僕が顔を上げると、青年は僕の目の前に立っていた。
「…本当に覚えてないんすか?」
「…な…なんの事ですか…?」
僕は僅かに滲み出た汗を腕で拭った。そして訝しげに首を傾げる。
「リアの事も、セイラの事も…」
「…リア?セイラ…?女性ですか?」
僕のその言葉を聞いた青年は、にんまりと笑うと落ちていた木の棒で殴り掛かってきた。
頭に鈍い痛みが走る。
僕はよろめき地面に膝をつく。そして青年は棒で僕を殴り続けた。
治り始めた傷がどんどんと開いてゆく。血が滲み、地面にへと落ちていった。
痛みに意識が遠退いてゆく。
「…憂滋さん、あんたにはこき使われたからね…これはその仕返しっつーことで。」
僕が最後に聞いたのはその言葉だった。
霞んでゆく視界の中に、血がついた棒と走り去る青年が映った。
そして僕の視界は真っ黒になったのだ。
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