序章

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民家の立ち並ぶ小道。 二人の少年が立っている。 一人は大石碧(おおいしみどり)。 くるくるとしたくせっ毛。猫の様な大きな瞳。正に少年然とした顔立ちをしていた。 もう一人は関本弥生(せきもとやよい)。 精悍で成熟した顔つき。背が高く大柄な体。大石とは対極と言える。 雪がちらつく中、弥生は険しい顔をしていた。 『…本気かよ?』 『おう。サッカーはもう辞める。』 碧はしれっと言う。 無敵を誇った小学生サッカーチーム。 【御勝町FC】 そこでボランチとして弥生はプレイしていた。 DFからパスを受ける。 振り向いて、ルックアップ。 敵陣に見える9番の背中。 碧の背中だった。 凄まじく速い足。 爆発的なシュート力。 しかも嗅覚とテクニックを備えたストライカー。 エゴイストだって構いやしない。 あれほど頼りになる9番は他にはいなかった。 プロチームのジュニアユースでプレイしている今でもそう思う。 なのに。 『…何で。』 弥生は自制気味に聞いた。 『つまんねんだよ。』 かっと血が昇るのを感じる。
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