プロローグ

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「水城 恵子様 いきなりのお手紙お許し下さい。 僕からのあなた宛の最後の手紙にしようと思いペンを取りました。 先日、僕にあなたは手紙をくれましたね。恥ずかしい話ですが、あなたのその優しい言葉に僕は涙を零しながら読んでいました。 僕にはあなたが必要なんです。 しかし、その優しい言葉が僕をじわじわと苦しめています。 僕はあなたのためになることが言えないのです。あなたのために、何かをすることが出来ないんです。僕は僕の情けなさに僕自身を殺してやりたくなりました。 いつの日か、あなたと一緒に過ごした思い出の数々が僕の頭いっぱいになりました。肌寒い秋の夕暮れに二人で海に行きましたよね。 あの時、あなたが『綺麗だね』と言って僕にくれた貝殻、今も捨てずに大事にしています。 あなたの中に少しでも僕との思い出は残っているのでしょうか? 僕は今でもあなたを愛しています。 あなたのその優しい瞳が、優しい声が、優しい笑顔が、僕をいつでも幸せにしてくれたことをどうか忘れないで下さい。 僕という人間がいたことを忘れないで下さい。それではお元気で。 さようなら 樋口祐介より」
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