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平成20年1月。
一人の少年が雨に打たれながら、路地にある植木レンガに腰をかけて座っている。
「はぁ…」
ザァと雨の音だけが少年を包んでいく。
「雨止まないなぁ…」
パタパタと近づいてくる足音が、一つ聞こえてきた。
「ん?」
「雨の中、じっとしてたら風邪引くぞ?」
「うるせぇよ、誰のせいだ誰の」
「すまん。仕事が長引いた」
「なんでもいいや、早く帰って飯食おう」
「あぁ。小虎も待ってるだろうしな」
少年は一人の男性と笑顔で立ち去っていった。
これから始まるのは、二人の出会いとこれからの物語。
少年の名前は山雀 偲淡。
己が認めた者、または物は必ず成功するという不思議な力がある。
これは、一年前に遡る。
「偲淡、父さんは偲淡のことを思って言ってるんだぞ?」
「…自分の為だろ。母さんが死んでから何回その言葉を聞いたと思ってる」
「ち、違う、偲淡の為に」
「……」
正直、俺はもう、この家に興味がなくなっていた。
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