八十六(ヤソロク)

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「どした‥‥。コレ‥。」ビンを手に取り、嫌ーな顔で言った。 「あぁ!ロクさんがくれたキャベツから出てきたの~。」 「どうしよってのさ、コレ。」 「大丈夫!蝶々になったら外にはなすよ~!」 なにが大丈夫なのかさっぱりだが、とりあえずテーブルの下に戻す前田。 「面白い人だよね~。また来ないかな!」ロクちゃんを思い出し、フフッと笑いながら言った。 「まぁ、面白いには面白いけど、あれが父ちゃんだぞ!どうすんだよ俺。」フゥ~と溜め息を吐く。 「いいじゃんか、楽しそうだもの!パチンコ屋さんなんだってね。お兄ちゃんも居るって?」タバコに火を付けながら、何となく聞いてみた。 「おぉ、そういえば兄貴はずいぶん会ってないなぁ。今は兄貴がやってんだよ会社は。母ちゃんは俺が小さい頃出てったし、父ちゃんは一人でフラフラ遊んでんだ。」 お母さんが居ないなんて‥‥。辛い過去を振り返らせてしまったわ!「ゴメン、そんなの知らなくって‥!」 「いや別に、母ちゃん向かいのマンションに引っ越しただけだったから‥全然困んなかったし。」父ちゃんも父ちゃんだけど、母ちゃんも母ちゃんだなぁー‥。 「そーなんだぁ~‥。」 話しながらも、眠くなってきた私をみて前田は、「おい!帰るからな!」 「もう帰るの~。」 「お前眠そうだぞ、もう寝ろ。俺もあんまり遅くまで居たらアレだし‥。」 「あれってなにさぁ。」 「遅くまで男と女が一緒にいるもんじゃないって事だ!」 ベシッと軽く頭を叩いて帰って行く前田。「おやすみなさーい。」本当にイイ奴だな、前田。
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